岩明均『寄生獣』その2:分裂した自己とアイデンティティの回復

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逆説的な問いかけにより獲得した批評性

※以下ネタバレあり

寄生獣が陳腐な環境論や人間性悪説に陥らなかった要因の一つは、
前回でも言及した本来人間が語るべきことをパラサイトに語らせていることにあると思う。
パラサイト側からの逆説的な問いかけによって、この漫画はおそらく作者の予想以上の批評性を持ちえたのではないか?

母性によりシンイチの胸の穴をふさいだ田村玲子

パラサイト側で最も重要な役割を演じたのは紛れもなく田村玲子である。
田村玲子は、常に「我々パラサイトは何者なのか?」と自問している
自らの遺伝子を持った子孫を残すこともなく、どこからかやってきた「この種(人間)を食い殺せ!」という命令に従うままに人を食らうことに疑問を抱き続ける。

また、田村玲子は新一の胸の穴を塞ぐという重要な役割を担わされる。
シンイチの母の頭部を乗っ取ったパラサイトによって、シンイチは胸を貫かれ重症を負う。
ミギーの活躍により胸の傷は塞がるが母を殺されたこと、またのちに、自分がこの母の顔をした、パラサイトを殺したことにより(実際に、殺したのは宇田川だが)心に穴が開いてしまう。
田村玲子は、包囲された景観の銃弾を浴びながらも抱えた子供を守り抜き、笑いながら死んでいく。
もちろんアイロニカルな笑いではなく心からの笑いである。
なぜ、田村玲子は、心から笑えるようになったのだろうか?
おそらく、実験的に生んだ赤ん坊を育てているうちに、そこに自分の存在意義を見出したからではなかろうか。
それは母性というものではないかもしれないが、パラサイトが決して非情な存在ではないということかもしれない。
シンイチは無抵抗のまま赤ん坊を銃弾から守る田村玲子の中に母性を見出だし、それに自分の母を重ねることでその穴は塞がる。
本来、自らは生殖能力を持たない寄生生物に、母親の役割をさせるところも岩明均の非凡なところ
ではないかと思う。

分裂した自己とアイデンティティの回復

シンイチがミギーと共生するようになってから、その変化を敏感に感じ取ったものがいる。
それが村野里美である。
1巻から絶えず繰り返される「君って泉進一君だよね?」という問いかけは何を意味しているのだろうか?
90年代は戦後順調に復興を重ねてきた日本にとって、大きな転換点となった時代である。
それまで持っていた日本人としてのアイデンティティが大きく揺らいだ時代でもある。
一つの体に2つの脳というのは、この揺らいだアイデンティティの分裂のメタファーではないだろうか?
自己を失ってしまっているシンイチに対して、アイデンティティを回復して欲しいという呼びかけだが、これは、新一自身の内面の声もあるような気がする。
その問いかけは以下のようにして解消する。
物語の最後にビルから落ちる里美を助けるために、寄生されていることが(おそらく)ばれてしまったシンイチに対して、里美が「キミが泉新一君だから」と言ったのは、そんなシンイチを里美が受け入れたのとともに、シンイチが自分自身を受け入れ自己を回復したということなのだろう。

最後に

作者は、前作の「風子のいる店」のときは、キャラクターがいてそこから物語を考え出したという。
今作では、物語が先にありそれにキャラクターを配置していったようなことをあとがきか何かで書いていた記憶がある。
なるほど、それで重要人物があっさり退場していくのかと合点がいった。
おそらく作者は途中まで、最後は人間vsパラサイトの全面戦争を考えていたのではないかと思う。
伏線としては、ミギーが後藤を見たとき「面白い」といっていることから、ミギーはシンイチと分かれてパラサイト側についたのではないか?
だがそれでは、この作品がこれほどまでの批評性を獲得しえなかったのではないか?
同様の結末はデビルマンで永井豪がすでにやってしまっているし、そのような大きな物語はすでに90年代には成り立たたなくなっていた。
その後、個人と世界の運命が結びついたセカイ系が一世を風靡することになる。
確かに大きな物語はすでに終わったかもしれないが、物語の持つ力そのものはいまだに失われているものではないと思う。

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