9月に読んだ本の紹介と感想

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実は他にも読んでいるのだが、リマインダーを残していかなかったので覚えているだけご紹介。

目次

『煌夜祭/多崎礼』

あらすじと感想

蒸気によって浮かぶ18の島を舞台にしたファンタジー。
魔物が徘徊する冬至の夜に仮面で顔を隠した「語り部」と呼ばれる漂泊の者たちが18の島をめぐり集めた物語を夜通し語り明かす。
今年の冬至もある廃墟に二人の語り部が集まった。
語られるうちに明らかになっていく18の諸島とそれにまつわる歴史。
そして、二人の語り部の正体とは?

一言でいってしまうと、大人のためのファンタジーで物語が語れるにつれて世界の成り立ち歴史、そして魔物と語り部の関係が明かされていく。
一見、関連のなさそうな物語たちが螺旋を描くように収束していく様は実に爽快。

『タルト・タタンの夢/近藤史恵』

あらすじと感想

パ・マルは商店街にある小さなフレンチ・ビストロである。
シェフの三舟が作る本格的ではあるが気取らない料理は美味しいものが好きな客たちを魅了する。
三舟は客たちによって持ち込まれる謎をサクサクと解決していく。

ビストロ・パ・マルシリーズの第一作で、日常の謎系の話。
派手な事件は起きないが、三舟の推理の切れは鋭い。
タイトルの料理が無理なく推理のカギとなっているところがいい。
そう、本シリーズのもう一つの魅力が出てくる料理である。
料理だけではなく普段なかなか知ることのない仕込みの様子なども楽しい。
とにかう出てくる料理が美味しそうで作者の料理愛がうかがえる。

『ヴィーナスの命題/真木武志

あらすじと感想

夏休みに入って間もなく、校舎から転落した男子生徒の死体が見つかった。
他殺か自殺か?
進学校の英才たちによる推理合戦と様々な駆け引きや謀略が絡んで様相は混とんとしていく。
果たして、死の真相は?

「頭の切れすぎる」生徒たちそれぞれの視点からの推理と解釈。
登場人物たちはどこかエキセントリックで才気走っていて何となく海外ドラマのキャラクターの様だ。
複数視点からの推理と意図的な時系列のシャッフル、叙述トリックなど内容は極めて難解で、物語を理解するには再読が必須かもしれない。

『夜市/恒川 光太郎』

あらすじと感想

妖怪たちが様々なものを売っている夜市。
夜市では欲しいものが何でも手に入るという。
ただし、それ相応の代償が必要であるが…。
小学生の時、夜市で野球の才能を買うために弟を差し出した裕司。
弟を取り戻すために、再び夜市を訪ねる裕司だが、彼が下した決断は?

「夜市」と「風の古道」の2つの短編が収められている。
「夜市」はかつて、自分の欲望のために、夜市に弟を置き去りにした裕司が、弟を取り戻す物語。
裕司の決断は、一見弟を取り戻すためのものに見えるが、実際は自分自身を取り戻すためのものだったのでないか?
「風の古道」は、どことなく『蟲師』を連想させる。元の世界に戻るための旅における出会いと別れが描かれる。

どちらの作品も、路地裏にぽっかり穴をあけているかもしれない異世界を描いている。
それは、此岸と彼岸の狭間に存在し、いつでも来訪者を待ち受けている。
ジャンルとしては、ホラーなのだが恐怖というよりは懐かしく物悲しい。

『秋の牢獄/恒川 光太郎』

あらすじと感想

突然、11月7日を繰り返すことになった、女子大生。
彼女は、ループに捉えられているのが自分だけではないことに気づく。
ループ者だけのコミュニティーに参加し、楽しみを見つけていく。
ループの世界には北風伯爵という畏怖の対象がある。
それと関係あるのか、ループしている者たちは一人やがてもう一人と次々に消えていく。
彼らはループを抜け出し、元の世界に戻ったのだろうか?
それとも…。

作者の文体はハードボイルドで、簡潔ではあるが非常に美しい。
その簡潔さが、テンポの良さつまりは読みやすさを生み出しているように思う。
表題作以外にも「神家没落」「幻は夜に成長する」の2編を収録しているが、
いずれも何ものかに囚われた者たちを描いている。
「神家没落」は迷い家の伝承の話だが、騙されて家に囚われるが抜け出した後も、家自体に心を囚われ殺人を犯してもその家に再び戻ろうとする。
「幻は夜に成長する」は人外の力を持つ少女が、新興宗教団体に囚われるのだが、実際に少女が囚われていたのは自らの力であったのではないかと思う。

『ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を/太田忠司』

感想

人気シリーズの1冊だが、今作では各話の冒頭に新太郎がイラストを手掛けているエッセイが冒頭に置かれている。
内容は、様々な紅茶の飲み方とそれにまつわる音楽(各話のタイトルにもなっている)のエッセイである。
他のシリーズと違い、新人刑事の視点で物語が語られている。
このエッセイと視点の違いが最後の伏線となっている。
様々な紅茶も美味しそうなら、それに合わせる新太郎の料理も魅力的である。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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