秋に読みたい本5選

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本
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食欲を刺激する本、秋を題材にした本を選んでみた。

目次

『土を喰らう日々/水上勉』

あらすじと感想

作者は、幼少期に京都の禅寺にいた経験を活かし、畑に作物を植えそれを糧に生活をする。
その日に食べるものは「畑と相談」して決める。
作るものは精進料理が中心で、地味なものばかりだが慈しみ育てた野菜を使った料理の数々は贅沢ではないが豊かで滋味あふれるものばかりだ。

詳しいレシピはないが、作れそうなものばかりなので親近感も沸く。
沢田研二主演で映画化された。

『タルト・タタンの夢/近藤史恵』

あらすじと感想

商店街の中にある小さなビストロ・パ・マル。
フランスの家庭料理を出す店だが、シェフの三舟は食材と料理法にこだわり、料理好きの胃袋をつかんで離さない。
客から聞いた不可思議な話に対して、三船は鮮やかな回答を提示する。

タイトルとなった料理にちなんだ謎が客から語られ、それを三船が推理するというよくあるパターンといえばそう。
だが、この作品はとにかく料理が美味しそうなのだ。
客に出される完成品だけではなく、仕込みの家庭も丁寧に描いているのもいい。
フランス家庭料理といえど、日本人にはなじみの薄いものも多く、どんな料理なのかついついスマホで検索してしまう。
飯テロ的な本なので夜中に読むのは危険。

『花の下にて春死なむ/北森鴻』

あらすじと感想

人気の香菜里家シリーズ第1作目。
三軒茶屋の路地裏にあるビアバー・香菜里家。マスターの工藤は客がが話す不可思議な出来事を持ち前の鋭い洞察力で推理していく。作中で真相が明かされることはないが、客の様子から外れてはいないようだ。
料理の腕も一流でおすすめのビールに合った創作料理は絶品である。

『タルト~』と同様の説明になってしまったが、この手の話は大体が似てしまうのだから仕方がない。
季節は春なのだが、如何せん工藤の創作料理が美味しそうなのだ(残念な語彙力)。
店はこぢんまりとしているがセンスが良く繁盛している。探偵役の料理人の腕前は一流である。常連が何人かいて新しい客と探偵役を仲介する。探偵役が訳ありである場合がある。などなど。
本作も工藤にはある秘密があるのだが、それは第4作目を待たなければならない。
北森鴻の作品にはその他にも『メイン・ディッシュ』など料理を題材とした作品がある。

『秋の牢獄/恒川光太郎』

あらすじと感想

女子大生である藍は11月7日水曜日を繰り返していることに気づく。
朝になるとリセットされてまた、11月7日がやってくる。
やがて、藍は自分の他にも11月7日を繰り返しているリプレイヤーがいることを知る。
リプレイヤーたちと楽しく過ごすうちに、藍は北風伯爵とう異形の存在を知る。
北風伯爵はリプレイヤーを一人また一人と消しているという。
消された人たちはどこに行くのか?
また、わたしはこのループから抜け出せるのか?

よくあると言っては何だがリピートものである本作。
本作が他のリピートものと違うところは、主人公がリピートを抜け出そうとしないところだ。
むしろ、リピートの世界のメリットを生かし目一杯楽しんでいたりもする。
恒川光太郎の特徴はハードボイルドと言えるほど簡潔でそぎ落とされた表現だ。
そしてどの作品にも、もの悲しさが内包されている。
今作でも、ところどころに簡潔ながらも美しい描写を見ることができる。

『1973年のピンボール/村上春樹』

あらすじと感想

友人と翻訳の会社を共同経営する僕は、双子の女の子と奇妙な共同生活を始める。
一方、故郷の街に残った鼠はジェイズバーに通い、空虚な日々を過ごしていた。
僕は鼠とよくプレイした3フリッパーのスペースシップを探し出し、配電盤の葬式をし、双子は出ていった。
鼠は女と付き合うようになるがやがて別れ街を出る決心をする。

1973年9月~11月までの僕と鼠をパラレルに描く。
時折出てくる秋の描写が美しい
村上文学の特徴に比喩と引用の多さがあげられる。
この作品も例外ではなく多くの評論家がその研究成果を発表している。
最も重要は比喩は「スペースシップ=直子」というものだろう。
他にも、断定を避け留保することで他者からの反論を防ぐ、コミュニケーションの不在、作品全体を覆う諦観、巫女の役割を担う少女なども村上文学の特徴だろう。
双子の少女が僕にとっての巫女であり、僕を生の世界にとどめたのに対し、鼠は…。
鼠三部作は軽妙な文体に対して、失い続ける残酷な物語なのである。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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