キング・クリムゾン『ビート(Beat)』:トーキング・ヘッズ化するプログレの雄、ノれそうでノれないポリリズム

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音楽
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1969年に『クリムゾンキングの宮殿』(通称宮殿)で鮮烈なデビューを飾り、未だに現役というから恐れ入る。

もちろん、もっと長きにわたる現役バンドもあるけど。


キング・クリムゾンの音楽は時期により全く異なっていることは周知のことだが、改めて聞き直してみると同じバンドとは思えない。


良く言えば音楽性が広くバンド(主にロバート・フリップ)の許容性が大きい。


悪く言うと、音楽的な信念がないとか(そもそもロックに信念なんて必要なのか?)いうことになるのだろうか?


確かに、『宮殿』と本作を続けて聞いてみるとその断絶は想像以上だ。


『Discipline』、本作、『Three of a Perfect Pair』をディシプリン期というとかなんとか。


フリップ先生がポリリズムに凝っていたらしいこの三部作、とにかくメンツが強力。


象やニワトリの鳴き声をギターで出す変態チックなギタリストのエイドリアン・ブリュー、チャップマンスティックなどという奇天烈な楽器を弾きこなすトニー・レビン、変拍子大好きなビル・ブルフォードと変人がそろっている。


フリップ先生自体が変人なのだから、類友ということになる。


流石のフリップ先生もこの3人なくしては、三部作を作ることは出来なかったであろうと想像する。


この三部作、出たときは「宮殿原理主義者」たちは眉をひそめたであろうことは想像に難くない。


久々の新作に針を落としたら出てきた音は「トーキング・ヘッズ」だったのだから。


ブリューはヘッズの『Live In Rome』に参加しているし、ある意味当然の成り行きなのかもしれない。

さて三部作真ん中の本作であるが、1の「Neal and Jack and Me」がとにかくかっこいい!


ビートニク世代を意識したロードムービー風の歌詞もいいし、何といっても変拍子で全くノれないのだ!

「ロックなのにノれないってそんなのアリ?」と思うかもしれないが、はっきり言って『アリ』だ。


ありおりはべりいまそかりだ(井之頭五郎)。


何を隠そう、これが私のクリムゾン全曲中のベストである。


『21世紀の~』とか『In the court ~』とか『Starless』とか『Red』とか他にもいろいろあるだろうと言いたいのは分かるが、私はこれ一択である。


「Neal and Jack and Me, absent lovers」と繰り返しながら最後はギターのアルペジオに収束していくところが特にいい。


ライブ映像も見たがそれもかっこいい。


蝶ネクタイで椅子に座ってギターを弾くことが許されるのはロック界ではフリップ先生だけだ(異論は認める)。


確かに派手さはないが、各曲のクオリティーもなかなか高いし、「クリムゾンと言ったら『宮殿』だけで十分」などと言っている方にこそ聞いてもらいたい。

※個人の感想です

【Track listing】

  1. Neal and Jack and Me
  2. Heartbeat
  3. Sartori in Tangier
  4. Waiting Man
  5. Neurotica
  6. Two Hands
  7. The Howler
  8. Requiem” (instrumental)

【Personnel】
Robert Fripp (g)
Adrian Belew (g,vo)
Tony Levin (b)
Bill Bruford (ds)

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