あらすじ
群馬県にある紅雲町で古民家風のコーヒー豆と和食器を扱う店・小蔵屋を切り盛りする杉浦草。
今回は、入浴ストライキをしている少年とライカのカメラを売る男の話(如月の人形)、近くにできたライバル店からのいやがらせと子供が障害を持っているゆえに障害者施設の活動に入れ込む男の話(卯月に飛んで)、アメリカで彫刻家として成功した娘のように年下の友人ナオミから、自分の油絵具を校庭の隅で燃やした人間を見つけてほしいと頼まれる話(水無月、揺れる緑の)、不当に安く店舗を買い取ったためその不正に付け込まれゆすりを受ける店主の話(葉月の雪の下)、店への無言電話とその裏で起こるいくつかの悲劇。すべての話がお草の因縁の人物へとつながっていく(神無月の声)、因縁人物と直接対決を果たすお草だったが…(師走、その日まで)の6篇を収録している。
感想
珈琲屋こよみシリーズの2作目にあたる。本作の6つの短編は連作短編となっており、すべて最終話に繋がっている。
基本的には、「日常の謎」系に当たるのだが、主人公であるお草は決して推理により物事を解決するのではない。
悩める人の話を聞き、ある時は助言を与え、ある時はあえて答えることなくその悩みに答えていく。
どちらかというとカウンセラーの仕事に近い。
76歳という年齢を考えればあまり派手な大立ち回りもさせられないが、決して安楽椅子探偵といわけでもない。
意外と積極的にあちこちに聞き込みに言ったり偵察にいったり中々にアクティブなおばあさんなのである。
このお草さん中々に波瀾万丈な人生を送ってきており、大恋愛の末、親に反対されてまで嫁いだ山県の家を追い出され、夫に取り上げられた息子の良一を3歳で亡くしている。
そして、この出来事はしばしばお草の回想で語られ、現在の行動の起因となっていることも多い(特に子供がらみで)。
後半はなかなかに大きな話になっていき、それこそ「箪笥には入り切らない」話で、前作とは違い中々に不穏な空気をまとった話となっている。
ナオミの登場が不自然だったことと、前作最後で宮崎の息子の家に行った由紀乃がしれっと紅雲町で1人暮らしを続けているのが少し疑問だった。
それと、前作に比べて格段に読みにくい文章になっていた。
これは、ネットでいろいろな感想を読んでいても目についたところだ。
そこそこ書きなれてきて、いろいろな修辞のテクニックを使いたくなったからというのが私の予想だ。
それともう一つ、和の小物などはよく出てくるのだが、コーヒーの蘊蓄があまり出てこないので、
こっちもよろしくお願いします(私はコーヒー好きなのだ)。
こんな人におすすめ!
- 日常の謎が好きな人
- 和の小物が好きな人
- 加納朋子、北村薫、大崎梢が好きな人
- 群馬県民
【収録作品】
- 如月の人形
- 卯月に飛んで
- 水無月、揺れる緑の
- 葉月の雪の下
- 神無月の声
- 師走、その日まで
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