ドゥービー・ブラザーズ『ミニット・バイ・ミニット』:前期とは全く違うが紛れもないAORの傑作

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音楽
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ドゥービー・ブラザーズとは?

ドゥービー・ブラザーズは1971年カリフォルニアでトム・ジョンストンとパット・シモンズを中心に結成された。

ちなみに「ドゥービー」とは「マ〇ファナ」の隠語である。

彼らは、解散までプロデュースをテッド・テンプルマン一人に任せていた。

彼らの特徴の一つはツインギター、ツインドラムでこれは長いこと彼らのトレードマークになった。

ツインギターはともかくツインドラムはかなり珍しい(最近ではキング・クリムゾンがトリプルドラムだが…)。

デビューアルバムは失敗に終わったが、セカンドアルバムからは早くも「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」のトップ30ヒットを放つ。

そしてサードアルバム『キャプテン・アンド・ミー』をリリースし、彼らの代表曲「ロング・トレイン・ランニング」「チャイナ・グローブ」のヒットを飛ばす。

このアルバムは個人的には彼らの最高傑作だと思っているが、これに同意するファンも多いだろうと思う。

前期の彼らの音楽的な特徴はリトル・フィートのような南部っぽい少し泥臭楽曲と分厚いコーラスワークにあると思う。

さらに、この後「ブラック・ウォーター」が全米ナンバーワンになるなど、順調満帆かと思われたが、
バンドの作曲・演奏の中心人物トム・ジョンストンが体調不良からバンドを脱退する。

代わりに入ったジェフ・バクスターの紹介でマイケル・マクドナルドが加入しこの後、バンドのイニシアティブをとることになる。

ここから、彼らの作風は泥臭いロックから洗練されたAORへと劇的な変化を遂げる。

ここまで変わってしまうとシカゴのように旧メンバーとマイケルとの軋轢が生じそうなものだが、
マイケル在籍時のライブ映像を見たことがあるが(レーザーディスクを持っていた)、旧曲のサポートも難なくこなしバンドはうまく機能していたようである。

しかし、80年代に入ると各メンバーのソロ活動が活発化し、バンドは解散することになる。

その後は、様々なメンバーで再結成を繰り返し現在も現役であるらしい。

AORの傑作、セールス的には彼ら最大のヒット作

さて本作の魅力はその洗練された楽曲群と残り香のように漂っているかつてのロックフィーリングだと思う。

アルバムは、ファンキーな1で始まり、やはりファンキーな10で終わる。

マイケル・マクドナルドがボーカルを取っているのが、1,2,3,6,10の5曲、パット・シモンズがボーカルを取っているのが4,5,7の3曲、そして2人のツインボーカルの9,インストゥルメンタルの8の1曲となっていて新旧ボーカリストのバランスもいい。

8がいかにも南部風の曲なので実は思ったほど都会的なアルバムというわけではないのかもしれない。

しかし、やはりマイケル・マクドナルドの存在感は大きく、その「ブルー・アイド・ソウル」と言われたハスキーでソウルフルだが都会的で深みのあるボーカルはバッキングに回っても際立っている。

スティーリー・ダンやTotoに参加しても1聴して分かる特徴のあるボーカルがこのアルバムを都会的なAORの傑作たらしめているのだろう。

それを象徴的に表しているのが9だと思う。

作曲はパット・シモンズなのだが、マイケルとのツインボーカルになると少しパットのボーカルが弱く、マイケル色に染まりAOR風の曲になってしまう。

このアルバムのハイライトは間違いなく2の「ホワット・ア・フール・ビリーブス」だ。

彼らの最大のヒット曲でもありグラミー賞でグラミー賞最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞の2部門に輝いた。

ケニー・ロギンスとマイケルの共作であるこの曲は、ドゥービー・ブラザーズが録音する前にロギンスによってレコーディングされていた。

しかし、聞き比べてみるとロギンス版よりもこちらの方が洗練されていて完成度も高いように思う。

少し能天気すぎるような歌詞とそれに合わせたような牧歌的なメロディーはマイケルの声によって極上のAORに仕上がっている。

メロディーの良さももちろんだが、サビの重厚なコーラスは圧巻。

また、マイケルのキーボードの独特なリフ(Totoのリアのような音)が、この曲を特徴づけている。

私は、ロック史上最も完成度の高い1曲だと思っている。

そのほかの曲も見ていこう。

レイドバックしている3にやはりマイケルの独壇場。

このアルバム中最もキーボードがフィーチャーされている。

マービン・ゲイでも歌いそうなソウルフルなナンバーに仕上がっている。

4は、1~3と違って、パット作曲のギター中心のナンバー。

だがここでもマイケルのバッキングと合いの手のように入るキーボードが存在感を出している。

5はパットとジェフ・バクスター作曲のアルバム中最もハードなナンバーとなっている。

コーラスの掛け合いなど前期の彼らを彷彿とさせる。

6はまたマイケルがボーカルを取るが、ソウルフルだが落ち着いた大人な雰囲気の曲。

7はまたパットにボーカルが移り、バックボーカルのニコレット・ラーソンとの息もぴったりのカントリー調のナンバー。

8はフィドルも加えたいかにも南部風のカントリーナンバー。

このるバムの中では少し浮いている感じもするが楽しそうな演奏がいい。

9はマイケル、パットのツインボーカルで二人のコーラスワークが素晴らしい1曲。

ジェフ・バクスターのギターも冴えている。

10は曲調としては1の対になり、歌詞的には2と対になる曲だと思う。

軽快なピアノのリフから始まるファンキーな1曲。

コーラスワークもいいし、サックスとトランペットなどのソロ、そして最後のアコギのソロがかっこいい、このアルバムの最後にふさわしい1曲。

マイケル・マクドナルドの存在感があまりに強いので洗練された1枚かと思いきやよく聞くと、随所に前期のドゥービーの良さがちりばめられた新旧のバランスのとれた、ある意味奇跡的な1枚だったのかもしれない。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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