前作はこちら⇒『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌』
あらすじ
草原のコック・オー・ヴァン
●荒地
一人の若者が打ち捨てられた荒地を買った。
ワイン用のブドウを、栽培するのだと言う。
奈穂の店に現れるが…
●宴
知人の結婚式の2次会を、ソン・デュ・ヴァンで開いた。南や村な奥さんの力を借りて何とか成功を納めた。
後日、南から荒地を買ったのが、元人気バンドのギタリストのダイチだと聞く。
ダイチがソン・デュ・ヴァンでランチを食べていると、見たことのない女が入ってきてコーヒーを注文する。
奈穂は丁寧にコーヒーを入れるが、その女はいきなりコーヒーをダイチの顔にかけた。
その女はダイチに向かって「人ゴロシ」と罵るのだった。
●東京
奈穂は、久しぶりに東京にきていた。
涼介が、4カ月の海外研修を終えて日本に帰ってきたのだ。
だが、涼介はこれから1週間後に、研修の成果を発表するために東京に残らなければならない。
一刻でも早く、涼介に会いたい奈穂は店を休んで東京まで来たのだ。
束の間の逢瀬を楽しんだあと、奈穂は法律事務所に向かった。
先日、ダイチにコーヒーをかけた女の弁護士は、奈穂の請求を聞くが、奈穂は謝罪のみを求めた。
弁護士の目からは最後まで猜疑の色が消えなかった。
●新年
ひよこ牧場の南のアイディアで、奈穂は洋風お節をケータリングすることになった。
運び手をどうしようかと思っていたが、南が涼介に話を通していた。
涼介は森野を誘い、ソン・デュ・ヴァンにやってきた。
森野は糖度の上がらないブドウを使い、大人のための葡萄ジュースを作り上げた。
それを聞いた南は、洋風お節に付けることを思い立ち、森野と交渉をする。
森野は今年始めて自分でワインを仕込んだと皆に報告する。
●挫折
涼介がイベント詐欺にあい、大金をだまし取られてしまう。
挫折の経験のない涼介を奈穂はどうやって支えるのか?
同級生たちの希望であった涼介の相手として奈穂を認めることのできない同級生たち。
2人の関係はどうなるのか?
●高原のコック・オー・ヴァン
読んでからのお楽しみ。
感想
基本は前作を踏襲した、夫のモラハラから逃げてきた奈穂が百合が原高原でカフェを開き、村人と交流を深めながら立ち直っていくというもの。
今回の見どころは、
・ワインづくりのために百合が原高原にやってきた森野大地。 元人気ロックバンドのギタリストだったが、メンバーの一人が自殺をバンドは解散してしまう。 一部のファンからはダイチこと森野大地がその原因であるという。 果たしてその真相は? ・お互いに想い合う奈穂と涼介。 涼介の海外研修で離れていた時もお互いに想いを一層深めていく。 ところが、森野大地の世話をするところを見られた奈穂に、大地とあらぬ関係にあるのではと疑われる。 奈穂と涼介の関係はいかに?
と今回は、新キャラの森野大地に関する様々謎と奈穂と涼介の関係の行方という2つを軸に展開していく。
しかし、正直これは失敗だったのではないかと個人的には思っている。
どちらかというと、涼介よりも大地の話に比重があり、奈穂と涼介が関係を深める過程が少しおざなりになってしまったのではないかと感じた。
確かに、マンネリを避けるために新キャラ投入というのは、シリーズものにありがちなことだが、大地のキャラがちょっと現実離れしているのがちょっと残念なところ。
そして、奈穂も確かにカフェ経営者としては経験を積みレベルアップしているが、南たちに褒められても「いやいや、まだまだ」と謙遜を通り越して、卑屈に近いものになってきている。
確かにトラウマを克服することは難しいものだろうし、その辺のことを書いているのかもしれないが、
物語としてはある程度の解決が見たいと思ってしまう。
ネガティブな感想が続いたが、前作の続編としての期待の裏返しだと考えてほしい。
一方で、出てくる料理は新鮮味はないものの、どれも食欲を刺激されるような描写となっている。
作者が余程の料理好きでない限りできない芸当だろう。
また、ひよこ牧場の南を始めとして、周りにいる人たちが皆、聖人君子のように奈穂を助けてくれる。
田舎暮らしの動画などをよく見るのだが、現実はそう甘くはないようだが、これは物語なのだから現実を忘れて楽しめればそれでいいのかもしれない。
その辺はやはりリアリティという点では、今一つなのかもしれない。
タイトルにもなっている「コック・オー・ヴァン」とは、「鶏もも肉の赤ワイン煮」のことで、
フランスの家庭料理だそうだ。
こっくりと煮込まれた鶏もも肉には、マッシュポテトがつけ合わせに出されることが多いという。
少しとろみのついた赤ワインのソースとマッシュポテトの相性は食べなくても間違いなく美味しいとわかる。
今回で一区切りついたので、続編は難しいのかもしれないが、また奈穂の作る料理を想像しながら、脳内で味わい尽くしてみたい気がするのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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