高校に入るとすぐに合宿というものがあった。
2泊3日程度のもので、オリエンテーリングをやったが後のことはどこに行ってのかも含めてさっぱりと忘れてしまった。
一つ覚えていることは、夜、部屋でテレビを見ていたとき、誰かが「あ、Mr.ミスター」と言ったことだ。
おそらく番組は「ベストヒットUSA」だった。
PVでボーカルが両手を大きく広げていたので、その時かかっていたのは多分「Kyrie」だろう。
なぜか今でもこのことを覚えている。
テクニシャン揃いのプロ集団
ロスアンジェルスでスタジオミュージシャンをしていたリチャード・ペイジ(vo,b)とスティーブ・ジョージ(Key)が結成したペイジズを前身とし、ギターのスティーブ・ファリスとドラムのパット・マステロットを加えてMr.ミスターとなった。
後から入った2人もスタジオミュージシャンであり、4人共にキャリア・テクニックとも持ち合わせたいわゆるプロの集団であった。
この辺は、同様の音楽性を持つTotoと似ているところがある。
ちなみに、リチャード・ペイジはボビー・キンボールがTotoを脱退したときボーカリストとしてオファーを受けたそうだ。
また、ピーター・セテラが脱退したChicagoからもオファーがあったそうだがどちらも断っている。
音楽的にはどちらのバンドにも合いそうだが、自分自身のバンド活動を優先したのだろう。
リチャード・ペイジはベーシストとしても一流で爽やかなハイトーンボイスはボーカリストとしても十分やっていけるものであった。
また、ソングライティング能力も高くそれが先の両バンドから誘われた要因だろう。
このアルバムはシングル、アルバムとも全米№1を獲得しバンドはブレイクした。
しかし、自作のアルバム『Go On …』はセールス的には失敗し、その後アルバムがお蔵入りする等のトラブルがあり1990年に解散した。
捨て曲なしの良アルバム
本作は、7,8の全米№1ヒット曲、トップ10入りした6だけではなく、Totoっぽい1はアレンジの良さが光る、ギターを前面に押し出した2、なぜかたまにサビが頭に浮かんでくる3、穏やかなバラード4など佳曲が目白押しである。
「Kyrie」はタイトル通りどことなく讃美歌のような雄大な曲、小鳥のさえずりのようなキーボードからリチャード・ペイジのハイトーンボイスを存分に生かしたイントロ部分でつかみはバッチリ。
歌詞も大きな視点から描かれており、サビでは自分の未来への祈りがうたわれている。
「Broken Wings」は、基本的に同じフレーズを繰り返すミニマルな曲だが、繰り返すたびに少しずつアレンジを変え最後まで飽きさせない。
音圧の高さやスネアの堅さなどが80年代的なサウンドであるが、今でもたまにアルバムを通して聴くこともある(これを書いている現在も聞いている)。
曲、アレンジとも本当にクオリティが高いのだが、1点不満があるとすれば、ギターソロが少ないことが挙げられる。
バッキングを聞いている限りかなりのテクニックを持っていると思われるのだが、それが最もわかりやすいギターソロが少ないのはロックアルバムとしては物足りない部分である。
なおリマスター版には2,8のライブバージョンが収録されており、彼らの演奏力の高さを存分に味わえる。
【Track listing】
- Black/White
- Uniform of Youth
- Don’t Slow Down
- Run to Her
- Into My Own Hands
- Is It Love
- Kyrie
- Broken Wings
- Tangent Tears
- Welcome to the Real World
最後までお読みいただきありがとうございます。
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