秋も深まってきたので『枯葉(Autumn Leaves)』の名演10選

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秋も深まってきたので『枯葉(Autumn Leaves)』の名演10選
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「枯葉(Autumn Leaves)」はもともとシャンソンで、いつのころから多くのジャズメンが演奏するようになり、今ではむしろ「ジャズが本家じゃ?」と勘違いするくらいのスタンダードナンバーになっている。


シャンソンというからには原題はフランス語で「Les Feuilles mortes」であり、作曲はジョゼフ・コズマ、これに詩をつけたのがジャック・プレヴェールでシャンソン歌手のジュリエット・グレコの歌唱でヒットした。


少し遅れてアメリカに入ってきたが、なぜか後半部分だけに歌詞がつけられ現在ではそちらの方が知られいるのではないか。
なので、ジャズから入ったのちに原曲を聞くと、とても同じ曲とは思えない。


ジャズにおいてはこっちのアメリカバージョンで演奏されていることがほとんどというか原曲で演奏されたバージョンを、私は寡聞にして知らない。
現在、HDに40ほどの「枯葉」が入っているが、すべてアメリカバージョンである。

同一企画夏編「去りゆく夏を惜しみながら「サマータイム(Summertime)」の名演10選を聴く【インストゥルメンタル編】」はこちら↓


目次

『Wynton Kelly !/Wynton Kelly』

これぞザ・スタンダードという見本のような演奏

切れのいいタッチを身上とするケリーの楽し気でスキップでもしたくなるような枯葉だ。
最初のテーマから崩しが入り、最後まで全く飽きさせない。ポール・チェンバース、ジミー・コブのマイルスのリズム隊との息もぴったりでスキがない演奏。

『The Sound/Stan Getz』

クールゲッツが見せる抒情性

ゲッツは生涯その破天荒な性格ゆえに多くの人間関係のトラブルを抱えていたことは、様々な媒体で言及されている。
しかし、彼のテナーサックスからあふれ出る音はまるで天上の音のように美しく、聞くものの心を捉えて離さない。
この枯葉は一見クールだが、音の端々から彼の情感が溢れ出るような切々とした演奏だ。 

『Toots Thielemans & Kenny Werner/Toots Thielemans & Kenny Werner』

ハーモニカでJazz?だがそれがいいのだ

日本では「ハーモニカおじさん」として有名(?)なベルギー出身のハーモニカ奏者、シールマンスとピアニスト・ケニー・ワーナーのデュオ。
この曲では、イントロとアウトロにオーケストラが入る。
少し甘い演奏だが、ギリギリでジャズの範疇に収まっている。

『Standard Time ,Volume 1/Wynton Marsalis』

このウィントンはなにかが違う

テクニックは抜群だが、演奏がつまらない。ことあるごとに評論家やジャズ通がそう言って(あるいは書いて)いた。
だが、この『枯葉』はどうだろう?
テンポを自在に変え、私が聞いた中で最速で演奏されるこの『枯葉』でのウィントンは、「顔はいつも通りクールだが背中にうっすらと汗がにじんでいる」、そんな感じを受けた。

『Alone Together/Jim Hall & Ron Carter』

次々飛び出す変なフレーズ

最近の若いジャズギタリストに「誰の影響を最も受けているか?」と質問すると、かなりの確率で「ジム・ホール」との答えが返ってくるそうだ。
もう少し前名は、ウェス・モンゴメリー、ケニー・バレル、バーニー・ケッセルといったところなのだろうが、若いジャズギタリストのギター・ヒーローはジム・ホールなのである。
ジム・ホールの特徴と言えば、美しいコードワークと普通のギタリストが弾かない変だけどカッコいいフレーズにあると思う。
ここでもジムはテーマこそ大人しく弾いていたが、その後はジムホール節全開で変だけどカッコいいフレーズを連発、ロンのソロの時はお得意のバッキングを聞かせてくれる。

『Return Of The Griffin/Johnny Griffin

フュージョンチックだがカッコいい現代的な「枯葉」

ジョニー・グリフィンは私の好きなテナーサックス奏者だ。
村上春樹に「硬く握られたおにぎりのようにハードボイルドな」と言わせた硬質なテナーは私の好みである。逆にフガっとした音は苦手でその筆頭がソニー・ロリンズである(もちろん好きな演奏もたくさんある)。
この演奏は、ウィントンと双璧をなすスピード感があり、舞い落ちてくる葉っぱを吹き飛ばしそうな疾走感がある。
かつて西海岸で最も速いと言われたテナー奏者の面目躍如である。

画像は悪いが演奏はいい。
見よ!この疾走感‼

『Portrait In Jazz/Bill Evans』

実はけっこう攻撃的なエヴァンス

エヴァンスと言えば必ずと言っていいほど「リリカル」という表現がついてくる。
確かに「My Foolish Heart」などを聞けば、そういいたくなるのもわかる。
しかし、実際はどうだろうか?
例えば、キャノンボールの「枯葉」と双璧をなすくらい有名なエヴァンスの「枯葉」だが、イントロから強靭なタッチで攻めてくるではないか。
ある評論家が「エヴァンスの特徴はリリカルなところではなく、カッコいいフレーズを連発するところ」と言っていたが、私もそれに一票を投じたい。

『French Movie Story/Barney Wilen』

フランスの伊達男が奏でる粋な枯葉

バルネ・ウィランは、フランスのテナー、ソプラノサックス奏者。
このウィラン、いかにもフランスの伊達男といった感じなのだが、サックスの音もダンディーなのだ。
柔らかいのに芯がしかっりとしているアルデンテのパスタのような音、男らしくほんのりと色気のある音なのである。
と分かったようなことを言ってしまったが、この演奏もアメリカのサックス奏者にはない、どことなくヨーロッパの香りを感じてしまう。

『Ahmad Jamal Trio/Ahmad Jamal Trio』

選び抜いた最小の音でつくり出す枯葉

アーマッド・ジャマルは、独特の「間」と、厳選した音によって音楽をつくりあげていくタイプのピアニストだと言われている。
非常に美しい音を出すピアニストだが、生粋のジャズファンからはカクテルピアノなどと揶揄されたとか。
マイルスのお気に入りでグループに誘われたなど様々な逸話があるが、無駄な音を嫌うマイルス好みのピアニストではある。
ちょっと変わったラテン風味の枯葉だが、これがのちに傑作との誉れ高い『Somethin’ Else』の「枯葉」の元ネタになり、同曲の決定版と言われるようになるとは本人も知る由もなかった。

『Somethin’ Else/Cannonball Adderley』

まさに決定版、黙って聞くべし

本当はマイルスがリーダーだとか、「枯葉」のイントロはジャマルの丸パクリだとかそんなことはどうでもいいのだ。
そのイントロの後に出てくるマイルスの最初の一音を聞けば、もうこの演奏の虜になる。
何でも初体験というものは後々の基準になるものだが、私の本格的な「枯葉」初体験はこれだった。
たしかワゴンで売っているようなコンピレーションアルバムに入っていたもので、飽きずに何度もCDプレイヤーに乗せた。
それ以来、「枯葉」はこれが基準となっている。
最初はどの演奏もこれに比べると物足りなさを感じたが、今ではその呪縛も解けて様々なミュージシャンの演奏を楽しんでいる。

ジャズの楽しみの一つに、同曲の聞き比べがある。
クラシックでも同様のことはできるが、ポピュラー音楽にはあまりない楽しみである。
上にあげた中から、皆さんの好みの演奏が見つかれば幸いである。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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