ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』:日本人が思っているほど本国アメリカでは売れなかった

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音楽
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「ビッグ・イン・ジャパン」という言い方がある。
海外では評価されないアーティスト(日本人以外の)が、日本では異常に人気がある状態を言うらしい。
クィーン、ボン・ジョヴィ、ジャパンなどが代表だろう。
おっと、最大のビッグ・イン・ジャパン、ベンチャーズを忘れてはならない、デンデケデケデケ。

さて、本日紹介するソニー・クラークもビッグ・イン・ジャパンの一人と言っていいだろう。

目次

ソニー・クラークとは

ソニー・クラークは1931年7月21日生まれ、アメリカのペンシルバニア州出身のジャズピアニストである。


クラークのプレイの特徴は「後ろ髪をひかれるような」と形容される少し引きずるような演奏法であろう。


後ノリとはまた違う独特のタイム感はクラークならではだが、時にたどたどしく聞こえてしまうこともある。


そのルーズな感じが本国アメリカではいまいち受けなかった知れない。


しかし、売れ行きとは別に本作の評論家筋の評価は高くオールミュージックしでは5つ星を獲得している。

クラークはブルーノートに11枚のリーダー作を残しているが、サイドメンとしてもなかなか優秀で、デクスター・ゴードン『Go』、リー・モーガン『キャンディー』、やグラント・グリーン、ハンク・モブレーなどの作品にも多数参加しているなかなか売れっ子だったのではないかと思われる。

しかし、重度の麻薬中毒だった彼は、31歳の若さでこの世を去る。
長生きしていればさらに我々を楽しませてくれただろう。

さて本作の聴き所を上げるとすると、

・クラークの作曲家としてのレベルの高さを楽しむ
・どこでも吹きまくるマクリーンのアルトサックスを楽しむ
・アート・ファーマーの優しい音色に癒される
・クラークの独特の「間」を堪能する

と言ったところではないだろうか。

クラークのオリジナル曲が実にいい

1.2.がクラークのオリジナルである。


この2曲を聴くだけでクラークの作曲の才が窺えるというもの。


タイトル曲の1は、ニューヨークの裏通りを千鳥足で歩く酔っ払いのようなルーズなブルース調の曲である。


この曲でクラークは2回ソロを取っているが(作曲者兼リーダーの特権)、最初のソロはほぼシングルトーンと言ってもいい簡潔なソロであるが、ここですでにクラークの特徴である引きずるようなピアノを堪能できる。


続いて、ファーマーが明快で切れのあるソロを吹く。ファーマーはあまり激しくブロウするような吹き方をしない。


一音一音愛しむようにやさしく丁寧に吹いている。


ファーマーは私のお気に入りのトランぺッターの一人だ。


いや、最も好きなトランぺッターかもしれない。


次は、ファナティクアルト吹き、ジャッキー・マクリーンがソロを取る。


普段よりは大人しめだが、だんだんと盛り上げていくところはさすがだ。


そして2回目のクラークのソロ、先ほどのブルージーなソロと違いこちらは少し洒脱な感じのソロである。


こちらのソロの方が私は好みだ。


その後、ポール・チェンバースがアルコを弾きながらソロに入る短いが印象的なフレーズだ。


なんかウィスキーのCМにでも使われそうな渋いベースソロである。


そしてテーマに戻り曲が終わる。


かなりルーズな曲なので一つ間違えれば、だらしないだけの演奏になってしまうがマイルスのリズム隊の二人が要所をピシッと締めているのだろう。

2.は哀愁あふれるタイトル通りマイナーなメロディーが日本人好みの曲。
 主題後半は全くのラテン調になる。


 マイナー調の曲におけるアルトサックスの音色は泣ける。


 マクリーンはかなり感情をこめて吹く方だと思うので、この曲は彼にぴったりの曲だろう。


 逆にファーマーは知的でクールなソロを取る。


 この2人の管楽器奏者の対比が面白い。


 確かマツコ・デラックスの番組で使われていたように記憶しているが果たしてどうだったろうか?


 曲自体素晴らしいので多くのミュージシャンにカバーされている。

私の推し

 とここまで、クラークの作曲能力の高さを褒めておいてなんだが、私の推しは4.の「ディープ・ナイト」なのである。


もともと、シナトラなどの歌ものであったこの曲のクラークはなぜかちょっと前のめりに弾きまくっている。


何か楽しいことが起こるような予感を秘めた実にウキウキするようなナンバーに仕上がっている。


シナトラのバージョンに比べるとかなりテンポの速い演奏でそれが、この高揚感につながっているのだろう。


シナトラのバージョンだとかなりしっとりとした感じだがテンポを変えるだけでこうも印象が変わるものかと驚く。


とにかくイントロ、テーマに続くソロまでクラークはノリノリで弾きまくっている。


「後ろ髪~」なんて形容は何のその、実に軽快で気持ちのいいソロを取っている。


それにつられるように、ファーマーのソロもこのアルバムの中では最も熱い。


音色は優しいのだが熱い。


当然それに続くマクリーンが熱いのは言うまでもなく、彼らしいファナティックなソロが楽しめる。


そして最後にフィリー・ジョー・ジョーンズが端正なドラムソロを取り、再びテーマに戻り曲は終わる。

オリジナルはここで終わっているが4曲でも十分満足のできる密度の濃いアルバムである。

ジャケットも超クール

数あるジャズアルバムのジャケットで最も有名なものの一つだろう。


キャリアウーマン風の女性の足首をとらえた写真は、そのステップを踏むように上下するフォントと相まって、クールな都会の雰囲気を伝えてくれる。

この有名なアルバムのデザインは、ブルーノート・レコードのアルバムを数多く手がけたリード・マイルスで、足のモデルはブルーノート・レコードの社長アルフレッド・ライオンの妻・ルース・メイソンだそうだ。


うーん、なかなかの脚線美。

中身もジャケットもこれだけ素晴らしい本作だが、アメリカでのセールスは今一つで、日本からの発注の多さにアルフレッド・ライオンが首を傾げたというエピソードもあるとかないとか。


おそらく、アメリカではもっとテンポの速い曲が好まれるので、タイトル曲のルーズさがいまいち受けなかったのではないだろうか?

日本のジャズ喫茶では数えきれないほどそのターンテーブルに乗せられただろう本作は、多くの日本のジャズファンの耳を育ててきたのだろう。


本当にお疲れ様ですと言いたくなる。

最後までお読みいただきありがとうございます。

【Track listing】

1.Cool Struttin’
2.Blue Minor
3.Sippin’ at Bells
4.Deep Night

5.Royal Flush
6.Lover

【Personnel】
Sonny Clark (p)
Jackie McLean (as)
Art Farmer (tp)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)

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