エリントンは何をやらせても凄いのだ!
デューク・エリントンは1899年4月29日生まれ、アメリカのワシントンDC出身のコンポーザー、バンドリーダーそしてピアニストでもある。
エリントン楽団での活動の素晴らしさはここで特に取り上げることもない。
皆さんの方がよくご存じのはずだ。
基本私はビッグバンドものを聞くことはない。
ビ・バップ至上主義者のように、まったく聞かないということはないのだが、限られた時間で聴くとなるとどうしてもスモールコンボものばかりになってしまうのだ。
だが、そんな私でさえ、やはりエリントン楽団の代表曲の素晴らしさは十分に理解できるし、
「A列車で行こう」「イン・ア・センチメンタル・ムード」「ソフィスティケイテッド・レディ」などは、クルマを運転しながら何とはなしに口ずさんでしまうこともあるくらいである。
それでも、自分から積極的に聞こうとしない。
だが、ピアニスト・エリントンとなると話は別だ。
チャールズ・ミンガス、マックス・ローチと組んだ、このピアノトリオ『Money Jungle』は私のフェイバリットの1枚である。
もう1枚、いぶし銀のベーシスト・レイ・ブラウンとのデュオ『ジミー・ブラントンに捧ぐ』もお気に入りである。
普段は口うるさいミンガスとローチも、御大の前では・・・・・・
さて本作はいろいろと音楽外でも口が達者な2人と組んだのだが、そこは御大エリントン。
一癖も二癖もあるミンガスとローチを正面からがっしりと受け止める横綱相撲である。
親子ほども年の離れた、エリントンとミンガス、ローチであるが、なんというか格が違うというか…。
もちろん、ミンガスとローチも決して悪いのではなく、エリントンに必死に食らいついていく様は、
いつも後ろから若手の尻をビシバシと叩いているのとはえらい違いである。
楽曲はすべてエリントンのオリジナルで、2をこのために書き下ろすなどエリントンも並々ならぬ力の入れようである。
1ではのっけからミンガスが仕掛けさらにローチも煽るが、エリントンは軽々とかわし、すれ違いざまに強烈なカウンターを入れている。
穏やかな好々爺が実は拳法の達人で、かかってきた腕自慢のチンピラを軽々とねじ伏せているような、そんな光景が浮かんでしまった。
エリントンのピアノは攻撃の手を緩めず、ミンガスとローチも反撃を試みるがここはエリントンの貫録勝ちだろう。
と分かったようなよくわからないことを書いてしまったが、この演奏とにかくスリリングで、正直途中は破綻一歩手前まで行っているような気がする。
2は、どことなくエキゾチックな香りのする曲であるが、ローチが大人しいのに対しミンガスはベースでアルペジオみたいなものをずっと弾いている。
どことなく子供が茶々を入れているみたいだ。
6はおなじみのスタンダードナンバーだが、ここではエリントンが先に仕掛けている。
他では聞いたことのないくらい激しい「キャラバン」である。
7もおなじみのメランコリックで美しいナンバー。エラとジョー・パスのものが私のフェイバリットだ。
エリントンのピアノは美しいのだが、ミンガスのベースはちょっと合ってないんじゃないかと思う。
ピアニスト・エリントンの底力を存分に堪能できる1枚。
ピアノトリオ好きには自信をもってお勧めできる。
【Track listing】
- Money Jungle
- Fleurette Africaine (African Flower)
- Very Special
- Warm Valley
- Wig Wise
- Caravan
- Solitude
- Switch Blade
- A Little Max (Parfait)
- REM Blues
- Backward Country Boy Blues
- Solitude (alternative take)
- Switch Blade (alternative take)
- A Little Max (Parfait)(alternative take)
- REM Blues”(alternative take)
【Personnel】
Duke Ellington (p)
Charles Mingus (b)
Max Roach (ds)
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