ジェリー・マリガンは1927年4月6日、アメリカ・ニューヨーク市で生まれた。
もともとはプレイヤーというよりはアレンジャーで、最初の名の知れた仕事はマイルス・デイヴィスの『クールの誕生』への参加で、ここではバリトンサックスのプレイヤーのみならず、「ジェル」「ミロのヴィーナス」「ロッカー」などの曲の提供も行った。
その後は、西海岸に移りチェット・ベイカーらとピアノレスカルテットを結成する等、様々な実験的な試みも行い、ウエストコースト・ジャズの中心的人物となった。
バリトンサックスというと「バリバリ」という野太い低音域が特徴で、ペッパー・アダムスなどがこのタイプである。
対してマリガンの音はとてもやさしくて懐が深い。一言で言ってしまうと「癒される」音なのである。
チェット・ベイカーのような堅めの音と合わせれば、そのエッジの鋭さをを包み込み、ポール・デスモンドのような同系統のまろやかな音と合わせればそれはもう至福の響きである。
本作は、そんなマリガンの中でも最もソフトで洗練されたアルバムだと思う。
表題曲を始めとして全体としてスローでメロウナンバーで固められている。
わたしのおすすめは1,2,5の3曲である。
1は、都会の夜が更けていく様を思わせるメロウで甘美ナンバー。私も大好きな1曲だ。
ここでマリガンはバリトンサックスではなく、ピアノを弾いている。
アート・ファーマーのやさしいフリューゲルホルンとジム・ホールのネオンの明かりが零れ落ちるような洒脱で煌びやかなバッキング、それを包み込むようなブルックマイヤーのトロンボーンの音色。
聞いていると自分がまるでマンハッタンにでもいるかのような気になってしまう。
2は『黒いオルフェ』の主題歌「カーニバルの朝」でセンチメンタルになりすぎない抑制のきいた演奏だ。
5は冒頭のコールアンドレスポンスがカッコいいマリガンの代表曲だ。
マリガンはこの曲をやはりアート・ファーマーとともにカルテットで『What Is There to Say?』に吹き込んでいるが、今作での演奏の方が私は好きだ。
全体的にソフトアンドメロウなアルバムなので硬派なJazzファンからは厳しい評価をする人もいるが、ラウンジミュージックに堕することなくJazzアルバムとして成立しているのは、マリガンの編曲者としての能力なのではないだろうか。
また、このアルバムはジャケットも都会的でおしゃれである。Jazzのアルバムは制作にお金がかけられない場合が多く、ジャケットは録音中のプレイヤーの写真を使うとかちょっと手抜きみたいなこともあるが、このジャケットは違う。
このアルバムの内容と雰囲気を見事に表したジャケットに仕上がっている。
【Track listing】
- Night Lights
- Morning of the Carnival
- In the Wee Small Hours of the Morning
- Prelude in E Minor
- Festival Minor
- Tell Me When
- Night Lights(1965 ver)
【Personnel】
Gerry Mulligan (bs,p)
Art Farmer (fh)
Bob Brookmeyer (tb)
Jim Hall (g)
Bill Crow (b)
Dave Bailey (ds)
1962年録音
コメント