近藤史恵『ヴァンショーをあなたに』:若き日の三舟の活躍がみられるシリーズ第2作

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ビストロ・パ・マルシリーズ第2作。
私は先に『マカロンはマカロン』を読んでしまったが、特に支障はなかった。
最もほとんど内容を覚えていないのだから、関係ないのだ。
この異様に忘れっぽいという特性のおかげでミステリーでさえ何度でも楽しめる。
ただ一点、困ったことは同じ本を何度も買ってしまうことがあるということだ。

目次

あらすじ

下町の商店街の一角にある、フレンチ・ビストロ・パ・マル。
フランスの家庭料理の店だが、シェフの三舟の出す料理は、素材へのこだわりと本場フランスで磨いた腕でお客たちの心と舌をつかんで離さない。
そんな三舟のもとに来る客はなぜか様々な謎を持ち込んでくる。
三舟は持ち前の推理力で、その謎を鮮やかに解き明かし料理だけでなく、客を満足させるのだ。

きちんとシーズニングを施しているにも関わらずなぜかサビてしまう田上家のスキレット。
そしてなぜか飼い猫のハンゾウとユキムラを窓から逃がしてします息子の意図は?(錆びないスキレット)

パ・マルの近くにかつての後輩がフレンチの店を出した。
ある日パ・マルに2人組の女性客が来店し野菜だけのコースを頼まれる。
後輩がパ・マルにやってきて先の女性客の正体と、彼女たちに本場のピストゥを振る舞ったことを告白する。それを聞いて、三舟は後輩に料理人としての矜持を問う(憂さばらしのピストゥ)。

パ・マルのオーナーがパ・マルの近くにブーランジェリー・ア・ポワ・ルージュを出すという。店を任されたのは若い2人の女性。
一方、金子のお気に入りのパン屋ブランがブーランジェリーのすぐ裏にありその行く末を心配するが、三舟は客層が被らないから大丈夫と請け負う。
オーナーに頼まれて三舟はア・ポワ・ルージュの軽食コーナーの料理をいろいろ提案する。
店に出すパンを廻りぶつかる2人の女性、1人はメロンパンもいいんじゃないかと提案するが、もう一人は絶対に本場フランスのパン以外は認めないと頑なな態度を崩さない。
しかし、三舟の見立ては外れア・ポワ・ルージュの回転を前にブランは閉店してしまう。
それと同時に、女性の一人が失踪してしまう(ブーランジェリーのメロンパン)。

パ・マルに来ると必ずブイヤベースを注文する女性がいる。
ある日、残したブイヤベースを持って帰れないかと言われ、三舟はそれを断る。
実は彼女は人気フランス料理店のシェフで、パ・マルの味を盗みに来ていたのだ。
しかし、なぜか三舟は気前よく彼女にブイヤベースを教えることを約束し、女性シェフが自分の店で作っているブイヤベースを味見するのだった(マドモワゼル・ブイヤベースにご用心)。

男が彼女に一目惚れをしてから10年。
3年前にやっと彼女と同棲を始めた男だったが、いつの間にか彼女は彼の元を出て行ってしまった。
彼女には元婚約者がいたが、傷害事件を起こし服役していた。
3年半の刑期を終え、男の元に元婚約者がやってきて、あるものを男に渡し、2度の前に現れないと男に約束する。
しかし、彼女は元婚約者が出所してきたことを知り彼のもとに行ってしまった。
彼女はどうやって元婚約者が出所してきたことを知ったのか(氷姫)。

失恋をし、元恋人がお気に入りだったトリュフ入りのオムレツを食べに来た日本人女性がいた。
店の入り口で偶然、日本人の若者と出会い一緒に食事をすることになる。
それが若き日の三舟忍であった。
女性が話す、星の王子様の謎かけを聞いているうちに、三舟はその女性のウソに気づく(天空の泉)。

ドミトリーで相部屋になった具合の悪い日本人の青年に手持ちの鰹節と味噌と感想わかめで味噌汁を振る舞う若き日の三舟。味噌汁のおかげで回復した青年とともにドミトリーで働く女性にクリスマスマーケットに誘われる。
最高のヴァンショーを飲ませると息巻く女性だが、お目当ての店のヴァンショーは以前の赤ワインを使ったものとは違い白ワインを使ったものになっていた。
店のおばあさんに、なぜ白ワインを使ったのか聞く女性におばあさんは「もう以前のヴァンショーは作らない」と言われてしまう。
理由を聞くと、娘の夫に自慢のヴァンショーを振る舞ったところ表向きは喜んでいたのだが、実はすべて窓の外の花壇に捨てていたとのことだった。
そのことにショックを受け、もうヴァンショーは作らないことにしたのだ。
それを聞いた三舟は、娘の夫がヴァンショーを捨てた理由を推理しおばあさんに話す(ヴァンショーをあなたに)。

感想

今回は、どことなくパ・マルの内科の描写が少なくちょっと寂しい気がしたが、出てくる料理はどれもよだれが出るようなものばかり。
夜中に読むんじゃなかったと後悔することしきりだった。
特に後半3話は、殆どパ・マルのメンバーが出ることがなかったのも、寂しさに輪をかけた。
だが、若き日の三舟の推理もやはり切れきれで特に、星の王子様のところは並の観察眼ではああはいかないだろう。
また、浮いた話のない三舟の恋愛話(?)も、またキャラクターの違った面を見せようとする作者の苦労が偲ばれる気がする。
最終話は、いまやパ・マルの人気メニューの一つ「ヴァンショー」誕生の前日譚である。
これも三舟の推理が冴える話だ。
おばあさんからのわずかな情報で、ヴァンショーを飲まなかった理由や夫の素性までピタリと当ててしまった。
1作目ではどことなく三舟のキャラが捉えどころがない気がしたが、だんだん造詣がはっきりしてきた。
現在は、3作だが、続巻を期待している。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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