山中千尋『Monk Studies』モンク愛に溢れたモンクの現代的解釈

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音楽
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モンクを現代のピアニストが弾くとこうなるのだ

セロニアス・モンクは1917年10月10日、ノースカロライナ州ロッキーマウントで生まれた。
モンクの演奏はまさに唯一無二で誰もまねのできないものだ。
モンクの演奏を聴いているとピアノというものがまさに打楽器であることを痛感させられる。
パーカッシブなタッチと独特のハーモニーと間、奇妙である時はグロテスクでさえあるその響きは、モンク以外がやろうものなら単なる色物になってしまうかもしれない。
村上春樹は著書の中でモンクについてこう言及している。

 セロにアス・モンクの音楽の響きに、宿命的に惹かれた時期があった。モンクのあのディスティンクティヴな──奇妙な角度で堅い氷を有効に鑿削る──ピアノの音を聴くたびに「これがジャズなんだ」と思った。それによって暖かく励まされさえした。

『ポートレイト・イン・ジャズ/村上春樹』より引用

芸術家の資質がその個性の発露にあるというのなら、モンクは個性派ぞろいのジャズメンの中においてもトップクラスに個性的な音楽──作曲においてもその演奏においても──を作り出していた。

山中千尋は○○年12月26日、群馬県桐生市生まれのジャズピアニスト。
バークリー音楽院を首席で卒業という、小曾根真や大西順子と同様の輝かしい経歴の持ち主だ。
ただ、このような優等生的なピアニストがモンクをやるとどうなるのか?と少し不安だったが、結果は予想以上にモンクっぽかった。
もともと面白いアレンジをすると思っていたが、このモンクの解釈はまさに大胆不敵、ロバート・グラスパー以上に上手くヒップホップを取り入れているのではないかと思う。

感想

1,4が山中のオリジナル、3の前半が山中のオリジナル、10はトラディショナルで他はタイトル通りモンクの代表作である。
全曲いいのだが、特におすすめは2,5,6,8だ。

2は、フェンダーローズが大活躍でがラテン調の爽やかなナンバーに仕上がっている。まるでアジムスの様でリオの海岸で聴きたくなるような1曲である。
どちらかというとニューヨークの裏通りが似合うモンクがこれほどまで、太陽と海が似合うサウンドになるなんて…。

5はベースラインが何とも面白い探偵の尾行の場面にでも出てきそうなスリルのあるアレンジになっている。モンクは自身がかなりミステリアスな存在と思われていたところもあり、これは面白いと思った。
同局の数あるバージョンの中でも私的には最も気に入っている。

6は原曲も好きだが、このアレンジはヒップホップのようにリズムを細かく刻むドラムと躍動化のあるベースが素晴らしい。ハモンドオルガンもカッコよくハードボイルドな演奏だと思う。
8も原曲が好きなのだが、このアレンジもドラムと推進力のあるベースがとにかくいい。
ハモンドオルガンもバリバリと弾きこなし、緩急のあるアレンジも面白い。

本作は、山中千尋のシンセ、フェンダーローズ、ハモンドオルガンのプレイも聞きどころだが、リズム隊がとにかくすごい。
この2人がいなかったら、ここまで面白い作品にはならなかったのではないだろうか?
モンクの面白さはコードワークの複雑さだけではなく間を含めた独特のリズム感にもあると思う。

最後に「Abide With Me」が入っているのは、いまだにモンクの探求は道半ばという意味だろうか?

【Track Listing】

  1. Heartbreak Hill
  2. Pannonica
  3. Nobody Knows – Misterioso
  4. New Days, New Ways
  5. In Walked Bud
  6. Rhythm-a-ning
  7. Ruby, My Dear
  8. Criss Cross
  9. Hackensack
  10. Abide With Me

【Personel】
山中千尋 (p, org, synth),
Mark Kelley (b)
Deantoni Parks (ds)

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