かつて、洋画や洋楽のタイトルを原題とは似ても似つかないものにすることが多かった。
また、似ていないわけではないが、余計なものがついていることも多かった。
映画の邦題でよく使われたのが「愛は~、愛の~」だろう。
最も驚いたのは『Gorillas in the Mist(霧の中のゴリラ)』が、『愛は霧のかなたに』だ。
シガニー・ウィーバー演じる動物行動学者の生涯を描いた作品だが、愛の要素はどこに・・・?
あちらのアイドルソングだと「恋の~」が多かったような気がする。
こちらの代表はデビー・ブーンの「You Light Up My Life」が「恋するデビー」に。
誰がつけているのかわからないが、センスを疑ってしまう。
今回取り上げる「涙のフィーリング」もその一つ。
REOスピードワゴンには「In Your Letter(涙のレター)」と「I don’t want to lose you(涙のルーズ・ユー)」という例があるが、いい年した男性バンドの曲にこれはちょっとないんじゃないか。
最近では、この手の創作タイトルは影を潜め、現代をカタカナ表記にすることが多いそうだ。
たしかに、その方がよっぽどいい。
ともあれ、タイトルとは関係なく「涙のフィーリング」は彼らの最後のナンバーワンヒットとなった。
このシリーズのラインナップは以下のとおり。
①パートタイム・ラヴァ―/スティーヴィー・ワンダー
Part-Time Lover/Stevie Wonder
②ホイットニー・ヒューストン「すべてをあなたに」
Saving All My Love for You/Whitney Houston
③ティアーズ・フォー・フィアーズ「シャウト」
Shout/Tears for Fears
④ダイア―・ストレイツ「マネー・フォー・ナッシング」
Money for Nothing /Dire Straits
⑤ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「パワー・オブ・ラヴ」
The Power of Love/Huey Lewis and the News
⑥フォリナー「アイ・ウォナ・ノウ」
I Want to Know What Love Is/Foreigner
⑦REOスピードワゴン「涙のフィーリング」
Can’t Fight This Feeling/REO Speedwagon
⑧ワム!「ケアレス・ウィスパー」
Careless Whisper/Wham!
⑨ USAフォー・アフリカ「ウィ・アー・ザ・ワールド」
We Are the World/USA for Africa
⑩シンプル・マインズ「ドント・ユー」
Don’t You (Forget About Me)/Simple Minds
この頃の曲って、キャラ立ちがしてるっていうか(曲にキャラはおかしいが)、実に個性的なのである。
聞くとビジュアルとともに頭の中に再現される。
売れるまで10年以上かかった苦労人たち
REOスピードワゴンは、1967年にイリノイ州で結成された。
当初、まったく売れなかったが年間300本以上のライブをこなし、自分たちの強みはライブパフォーマンスだと確信する。
1977年に発表したライブアルバム『ライヴ〜嵐の中へ』はバンド初のゴールドディスクとなる。
1978年発表の『ツナ・フィッシュ』は、初のトップ40入りを成し遂げる。
シングル「ロール・ウィズ・ザ・チェンジズ」「出発の時」の2曲も、スマッシュヒットとなる。
そして1980年発表の『禁じられた夜』は、バンド初のナンバーワンヒットとなる。
このアルバムは15週ナンバーワンをキープし、総売り上げは1,000万枚以上とバンド史上最高の売り上げを記録した。
シングル「キープ・オン・ラヴィング・ユー」がシングルナンバーワン、「テイク・イット・オン・ザ・ラン」が5位、「涙のレター」と「ドント・レット・ヒム・ゴー」がトップ20入りとなる。
バンドは、名実ともにアメリカを代表するロックバンドとなる。
しかし、この後、バラードでのヒットが続いたことから「産業ロック」などと言われることもあった。
REOスピードワゴンの特徴は、年間300本以上のライブで鍛え上げた派手さはないが堅実な演奏力と、ハイトーンで伸びやかなケヴィン・クローニンのボーカルである。
曲はハードな曲でもメロディアスでちょっとハードロックになり切れないところもあるが、キャッチ―で耳なじみのいい曲が多い。
また、あまり言及されることがないが、歌詞が非常になめらかでケヴィンのボーカルとよく合っている。
そして私が密かに気に入っているのが、ゲイリー・リッチラスのギターの音色である。
ちょっとごつい風貌に似合わず、実に美しくギターを鳴らす。
決してテクニカルではないが楽曲に寄り添うようなメロディアスなギターソロ、特に「テイク・イット・オン・ザ・ラン」のソロは私的に全ギターソロの中でかなり上位にランクインしている。
ケヴィンの個人的な体験が生み出した極上のバラード
米国のWikipediaによると、このバラードはボーカルのケヴィンの個人的な体験から出来上がったようだ。
バンドは一旦、ハードロックを志向したのだが、再び「キープ・オン・ラヴィング・ユー」のようなバラードに回帰した。
「キープ・オン・ラヴィング・ユー」が抑制の効いたビターテイストのパワーバラードだったのに対し、この曲は甘く、いささか感傷的過ぎると感じることもある。
甘美なメロディは、ケヴィンの滑らかなボーカルとよくマッチしており、歌詞もこの甘いメロディーによく乗っていて、歌詞の一語々がそのままメロディになったかのようだ。
しかし、イントロからアウトロまで徹頭徹尾美しいメロディーで埋め尽くされていると、お腹いっぱいになりそうなものだがこの曲は所々でリッチーのギターが曲を引き締め飽きさせない。
ケヴィン以外のメンバーが「あの馬鹿げたバラード」と読んでいたこの曲は、このバンドの実質最後のナンバーワンヒットとなった。
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